有料会員向けレポート・サンプル(2024.03.17)

「今週は中銀ウィーク。日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアで、中央銀行の政策決定会合が行われます。」

「日本銀行は「マイナス金利解除」「YCC政策撤廃」など金利引き上げ傾向が鮮明になり、FRBは、金利据え置き」

■ニューヨーク市場は先週末が「株価指数先物」「個別株オプション」「株価指数オプション」の四半期に一度の決済日でした。

そのため三指数ともに下落しました。

しかし、その変動は、それぞれの決済に伴う変動と考えたほうが良く、明確な方向転換ではないと考えています。

FRBは、昨年末、24年、25年での利下げ回数を3回ないし4回とコメントしました。

しかし、2月のCPI、PPIはいずれも市場予測を上回っており、株式市場が期待する「早期の利下げ開始」は、遠のいたと考えるべきです。

「インフレ退治のためには景気後退も余儀なし」という状態が到来する可能性があります。

アメリカの雇用調査から分析すると、「ADP雇用統計」では、アメリカは景気後退に差し掛かっています。

前例から想定すると、すでに「金利引き下げ」に入っていなければならない段階です。

しかし、「インフレ」抑制を最大課題とすると、また、強い「景気動向」を考えると、「景気過熱」に向かわせるような「金利引き下げ」には踏み切れないと考えます。

アメリカは際どい状況にあります。

「ADP雇用統計」だけでなく「住宅販売」などで、景気後退の兆しが見え始めています。

アメリカの株式市場は、「金利引き下げ」を最大の材料として、高値圏を維持しています。

今週は、「金利引き下げ」と「生成AI」の拡大を期待したハイテク株への買いで相場が維持されています。

今週のFOMCの結果により、「期待」が剥落して、「金利高」による経済への悪影響が浮上してくるとすると、ニューヨーク市場には、本格的な調整局面が到来します。

アメリカの不安定な状況を解消するのは、やはり「ハイテク株」の現実の業績です。

好調が想定される「ハイテク企業」各社の業績が、株価を下支えすると考えています。

4月から始まる業績開示までの時間帯が、調整期間になると想定しています。

■日本市場では、18日19日に開催される日本銀行政策決定会合で、「マイナス金利政策」「YCC政策」の解除方向が決定すると想定しています。

先週開催された「春闘一斉回答」で、5%超という、インフレ率を上回る回答が出てきて、日銀が、政策を変更する蓋然性が高まりました。

とはいえ、「金利引き上げ」というほどの景気の好調さはまだ見られていません。

「最悪のデフレ状態」が解消されたという確認ができたというところだと考えます。

「ETF買い付け」「国債買付け」などの市場安定策も廃止されるとの思惑もありますが、この政策は、「いざという時の切り札」として、日銀は放棄しないと考えています。

(もっとも廃止した後に再開すればいいだけの事ですが・・)

日本市場でも、アメリカ同様、決算が重要なポイントとなります。

アメリカと異なり、日本は、3月が決算期です。

多くの企業が今月末に決算を迎えます。

「配当」「株主優待」「分割」などの資本政策の基準日となります。

そのため、日本株の調整局面はアメリカ同様、各企業の決算動向次第ですが、期末特有の株主権利の確保目的の下支えが入りやすく、下値は限定的になると考えます。

■日銀の「マイナス金利解除」「YCC解除」は、しかし、「金利引き上げ」ではありません。

今週は、「マイナス金利解除」を「材料」にして、「金利敏感株」などに売りが出る可能性もありますが、限定的だと考えます。

実態的な影響は軽微だからです。

日銀政策決定会合の翌日は日本市場は「春分の日」で、休場です。

またその日は、アメリカでFOMCが開催されています。

今週の転換日は21日です。

■今週の気になる銘柄は以下を考えています。

・値がさハイテク株は、依然として足踏み状態を続けると想定しています。

アメリカでSOX指数などが上昇しても連動するとは限りません。日本の値がさハイテク株、とりわけ半導体製造関連銘柄の多くは、今期業績が良くありません。

来期の期待感は大きいのですが、その開示が正式には行われていません。

そのため、アメリカの半導体各社よりもPERなどが「割高」になっています。

日本の「値がさハイテク株」は、4月中旬から5月にかけての決算開示、もしくはその前に「上方修正」「来期想定」などを開示されなければ、上値追いは厳しいと考えています。

しかし、期待感は依然根強く下値も限定的ではないでしょうか。

「横這い」「足踏み」状態を想定しています。

・金融株各社

「マイナス金利解除」により、都銀各社や地銀上位行などは明確に業績にプラス要因になると考えています。

先週軒並み調整局面に入った感のある金融株ですが、今週後半に再び上値追いを開始するかどうかは微妙です。

ただし、配当利回りなどの観点から下支えが入ると考えています。

やはり「横這い」からやや上昇傾向の可能性を想定しています。

「逆指値」で、一旦手仕舞いをお勧めしました。

「再投資」は、まだ、トレンドが明確になるまでお待ちください。

・「値がさハイテク株」が足踏みをしている中、中低位株が、動意づいています。

割高が際立つ「値がさハイテク株」と比較して、中低位株の中には、「底値観」「値ごろ感」が出てきている銘柄も増加しています。

「値嵩株」に比較して「中低株」は、個人投資家にとって買いやすい傾向もあります。

・帝人(3401)株価:1393円 ロスカット株価:1338円

・住友化学(4005)株価:329.3円 ロスカット株価:320円

■先週開示された「主体別売買動向」で、海外投資家の1900億円の買い越しと個人投資家の3600億円余りの買い越しが開示されました。

これまで、海外投資家の「買い」に対して「売り」で対応していた個人投資家の動きが久方ぶりに転換しています。

「押し目買い」が主力の個人投資家の買いは、「値がさ半導体」株などの先行して株価を上げた銘柄群の「押し目」を

買い向かったものかもしれません。

しかし、この週の個人投資家は、現物は売り越しです

買い越しの3700億円近くはほとんどが「信用取引」によるものです。

短期間での相場の反転に期待したこれ等の「信用取引買い」は、今週の波乱要因になる可能性もあります。

すなわち、まだ、「売り残り」があると想定される機関投資家の売りに加えて、これら「個人投資家」の「戻り売り」が追加される可能性が有るからです。

相場の転換点は、期末越え、と決算です。

投資を急ぐ必要は無いと考えています。