代表中野を嗤え「総合商社の憂鬱」(2024.02.07)

「総合商社の第三四半期決算が開示されました。5社ともに営業減益の数字を
開示しました。

株価はそれを反映して、さえない展開です。
しかし、三菱商事だけは、自社株買いを開示して、株価が上昇しました。

株主にとってはウェルカムですが、果たして、本当にそうなのでしょうか。」

■先週から今週にかけて大手総合商社五社が相次いで決算を開示しました。

五社ともに減収減益、通期想定もそろって、減収減益の見通しです。

総合商社株は、昨年のバークシャー・ハサウェイによる大量保有報告が開示
され、日本の個人投資家も追随した投資を行い、株価は上昇しました。

さて、この総合商社の減収減益の決算に対して、市場は、やや、混乱している
と考えます。

株価は勢いを失い、総じて総合商社の株価は下落しています。

■その中で唯一気を吐いているのが三菱商事(8058)です。
決算は他社と同様、減収減益でした。
異なるのは、自社株買いを5000億円実施することを開示したこと。そして、
KDDIとローソン株をシェアすることを開示したことです。

ローソン株に関しては、来期、決算上の利益として1200億円の利益が三菱商事
に入ります。
来期想定される現役要素を相当量解消できます。

市場への影響は「自社株買い」でした。
5000億円という規模は市場を驚かすに十分な金額です。

■さて、バークシャー・ハサウェイが総合商社に投資した理由は、世界の景気が
回復する過程で、総合商社が利権を握っている「資源」の価値を評価したと
言われています。

世界でインフラ開発が進み、道路や建物が建設されていくと、さまざまな資源が
必要となります。
資源価格が安定的に上昇し、総合商社の利益が拡大していくというのが基本シナリオ
でした。

しかし、今回の三菱商事の資本政策は、このシナリオに対して否定的です。

■資源に対する新規投資をやめる。資源価格の下落に備える。
新しい商材を探す。などなどが目標とされます。

つまり、来期以降の成長シナリオが描けていないという宣言をしたと考えています。

成長シナリオが描けないという事は、株価が下がるという事であり、取引所から
指摘されているROE1倍以上(同社は1.36)の維持も懸念されるかもしれない。

そのために株価の買い支えとして5000億円の自社株買いを実施し、買い入れた株式は
全額償却して、資本を減少させる(ROE対策でもあります)予定です。

総合商社としては、大きな決断であると考えています。

三菱商事以外の総合商社にもその流れが波及する可能性があります。

■三菱商事の株主にとっては自社株買いは利益確定のために有難いものですが
長い目で見ると、総合商社が、今までのビジネスモデルを変更させる転換点に立っている
という象徴的な出来事だと考えます。

5月の決算開示時期に来期の想定、今後の方針などを明確に示すことが出来なければ
株価を維持し続けることは厳しくなるのではないか、そう懸念しています。