代表中野を嗤え「アメリカは難しい」(2024.08.08)

「日本株の変動は「遅れてきたヘッジファンド」の敗戦処理で行方が
決まります。ポイントは今週末の「SQ」です。遅くとも来月の
メジャーSQ」が期限ですが、遅くなればなるほど「ヘッジファンド」の
疵が大きくなり破綻の可能性も出ます。
日本の相場の落ち着きは訪れます。大きな課題は日本ではなくアメリカです。」

■アメリカのGDPの70%は個人消費で成立しています。
その個人消費の相応の部分を高齢者と富裕層がけん引しています。

アメリカでは日本で一時期よく使われた「中流」という概念の「中間層」が
極めて薄くなっています。
「中間層」の担い手だった「工場労働者の管理職」「営業職」「自営業者」などが
社会の変化で仕事自体が縮小したり喪失したりしているからです。
早期縫いリタイアした高齢者は「401K」や年金、株式などの含み益の増加で
消費を拡大させれう事が出来ますが、それ以外の層は、富裕層との格差が日を追って
拡大していると想定しています。

つまりアメリカの経済運営のためには「インフレを抑制する事」(高齢者にとって
生活費を圧迫するインフレは最大の敵)「株価が堅調に上昇する事」(高齢者の含み益を
維持拡大することにより消費が増え、それが株価上昇につながる)「ドル高を維持する事」
(輸入国家アメリカではドル高以外にインフレを根本的に抑制する方法はない)
「住宅金利を低位安定化する事」(次世代の生活のためと国内消費を促進するため)

というポイントが優先順位だと考えます。

■アメリカ経済はその方向で旨く行っていると市場関係者は思いたがっています。

「居心地がいいから」です。

しかし、『いいとこどり」のそんな状況は続きませんし、私が5月の講演会でも指摘したように
ちいさな矛盾が出始めていました。
正に「神は細部に宿る」です。
「雇用統計」における企業調査と家計調査の格差、株式益回りの債券利回りと比較しての
高さなど看過できない点がみられていたのです。

インフレ率の低下とともにGDPの低下がみられ、アメリカの「順調な経済成長」というシナリオ
の根幹が壊れそうになっています。

8月1日に開示された雇用統計と失業率の明白な悪化はその懸念を強くしています。

しかし、次のFOMCは9月17日18日です。それまではFRBは手の下しようがありません。
この間に仕掛けられればアメリカの株式市場はひとたまりもありません。

幸い、その勢いは安定的になりましたが、大統領選挙が佳境を迎える中で難しいかじ取りが
求められます。

■明らかな「景気後退」を意識した「金利低下」は相場の下落を加速させる可能性があります。

「金利低下」は「景気後退を防ぐ」ためにではなく、「より経済を成長」させるためにのみ
発動させるという極めて「狭い大義名分」が必要だからです。

アメリカは金融市場がもっとも発達している国です。
景気停滞が見えた瞬間から債券金利が急速に低下し始めました。
株式市場から債券市場へ資金が移動したからだと考えます。

そして、今週に入り、その動きがやや落ち着き始めています。

実は日本でも同じことが起きています。
「金利が上昇する」という事は「景気がいい」という判断が市場に生まれているという事です。

中央銀行や政府が判断するのではなくあくまで「市場が判断する」という事が資本主義社会では
極めて重要なことなのです。

日本銀行は、本日副総裁が「講演会」で、植田総裁がコメントした、「金利をさらに引き上げる余地がある」
という発言におけるネガテイブな印象の火消しに懸命となりました。

中央銀行の保有している「印象」と市場の保有している「印象」との差は、大きいと考えら宝です。
現実的に日本銀行が「政策金利」を引き上げてから、昨日までに債券金利は大きく下落しています。
「市場」では日本銀行が考えているほど経済に楽観を抱いておらず、政策のミスにより、再び「デフレ」
に陥る、元の木阿弥になると懸念しているからだと思います。

ようやく、金利が落ち着き始め株式市場も安定を始めました。

事程左様に中央銀行による「金利操作」は難しいという事です。

■アメリカは「インフレ抑制」「株価維持」という相矛盾する条件を飲み込まなければなりません。

日本以上の困難さがこれから、訪れます。
大統領選挙、その後の新大統領による政策への影響などを考慮しなければなりません。

アメリカ市場は、経済成長をけん引すると期待されているハイテク部門への期待がより高まります。
より高まるだけに、高い期待にわずかに答えられないだけでも株価は下落します。
市場が『いらだち」を抱えている証かもしれません。

9月に金利が下がるときに、「市場」は、その下げ幅で十分かどうか、などを判断します。

これまでのような「バラ色」のシナリオだけでは賄いきれない「新しいシナリオ」が待たれている、
そう考えています。