代表中野を嗤え「株式持ち合いは「悪」なのか?」(2024.03.07)

「日経平均株価が史上最高値を記録して以来、1989年当時の「昔話」を
ネタにするコメンテーターが増えています。

当時営業マンだった、当時メデイアの金融機関担当だった、などなど
それぞれ、「武勇伝」が飛び交います。

しかし、明白に言えることは、当時の日本市場が歪を抱えていたこと
です。」

■当時の日本市場の主要登場人物は金融機関と事業法人です。
一つは「特定金銭信託」で、もう一つは「株式の持ち合い」です。

海外投資家の比率は10%から15%程度でした。

日本の株式市場は、日本独自の不明瞭な部分が多く、海外投資家から
見ると「ルール」が明確でないのに試合をしている、ような状況でした。

現在、損保各社が「政策保有株式」をすべて売却するとされて、市場
では久しぶりに「持ち合い株」という言葉が飛び交いました。

「持ち合い株」とは上場企業同士で、株式を同一金額同士保有をする
という事です。
目的は以下です。
1・安定株主を確保する事(当時は株主総会を乗り切る事、株主が安定
していることで経営の自由さを保つ事です)
2・株価の安定を図る事。(当時は自社株買いという制度がありません
でした。自社株買いの変形としての持ち合いもありました。)
3・ファイナンスの円滑な遂行

などです。

当時は市場には発行株式の3分の1以上は「持ち合い」で、固定され
おり、現実的なPERは3倍に見てもいいのではないか、という乱暴な
意見もあったほどです。

市場の透明性を歪める、需給関係を歪めるこの「持ち合い」という仕組み
は、株式投資という見地からは好ましいものではありません。

しかし、株価が上昇している中で、「持ち合い」相手の株式も自社株
も上昇して、「含み益」が拡大した会社が多かったのも事実です。

■現愛の日本市場は、当時と比較すると格段に透明性が上がっています。

「仕手筋」が跋扈できる金融環境ではありませんし、おかしな売買に関して
の規制も格段に厳しくなっています。

さて、金融機関や損害保険会社が株式を保有することが問題があるので
しょうか。

金融機関の保有株式は、投資用と長期の資産ように分離されます。
「持ち合い」株式は長期保有の資産として管理されます。
株式は、金融資産として有効な運用手段ですから、金融機関や事業法人
の株式運用を規制するのはナンセンスだと考えています。

「持ち合い」の悪い側面は、株式保有により、その会社の経営に影響力
を与える事、事業などで競争条件を自社に有利に変更させるなどの
無言の影響力が行使される可能性がある事です。

長年の慣習でしたが、現状で、「持ち合い」が必要な上場会社は極めて
わずかではないでしょうか。

本質的に株式を投資として保有し、あるいは、事業としてM&Aの一環
として保有する株式と、1989年当時の「持ち合い」とはその意味も
内容も大きく異なっていると思います。

■「持ち合い」株式の市場放出はどんどん行えばいいと考えています。

流通性が向上することで、放出された会社の本来の市場価値がより明確
になるという事ではないかと考えています。