「ここ最近、日本企業の「自社株買い」が増加しています。決算開示に際して、
「配当変更」「分割」「自社株買い」は三点セットのように、行われています。
「自社株買い」の開示は、株価上昇に大きく寄与します。
日本企業の「株価」に対する意識が高まっていることが背景にあります。」
■現状の株式市場では、好感されている「増配」「分割」「自社株買い」ですが
利枝音的には、「企業価値」が変化するわけではありません。
「配当」も「自社株買い」も会社の剰余金、内部留保が使われるにすぎませんから、
現実的には、内部留保の金額が減少するわけであり、企業は保有する資産が
減少するわけです。
という事は「企業価値」の増加にとってはプラスではないということになります。
「株式分割」は、たんに「分割」して、単位当たり株価を下げるだけですから、
これも「企業価値」を増加させるものではありません。
しかし、株主から見ると、大きな意味があります。
■「配当」の増加は、株主の目先の取り分を増加させます。
「自社株買い」で、市場から株を買い上げられれば、その行為自体で「株価」が
上昇する可能性もあります。
さらに、「自社株買い」で、会社に購入された株式は、「発行済み株式数」から
差し引かれて計算されます。
つまり、そのことで、一株当たり利益などの指標が押し上げられ、流通株式の
「株価」を上げる事になります。
法律上は、「自社株買い」も「配当」と同じ扱いになります。
「自社株買い」で買い付けた株式は、会社がそのまま保有を継続することもできます。
将来のM&Aの機会があれば、現金の代わりに、この株式を使って、支払う事も
出来るからです。
「消却」して、発行済み株数から失くしてしまうこともできます。
■会社から見ると、余剰資金の使い道として、研究開発や設備投資、M&Aと資金の
使い道はありますが、もっともリスクの少ない資金の使い道として「自社株買い」
が選択されるという事です。
アメリカでは、設備投資や研究開発にその資金を回してもらう事を促進するために
自社株買いをした金額に対して1%(今後4%に上げる予定です)の課税が成されています。
株主ではなく株主以外の「ステークホルダー」にも目を向けろという示唆です。
とはいえ、会社からすると「自社株買い」は効率のいい投資でもあります。
リスクがなく、「株価」が維持されもしくは上昇します。
株主からの評価も上がります。
あまり悪いことはないのです。
しかし、それにより、成長をさらに加速させる機会を喪失していることも事実
です。
まだまだ投資が必要な新興企業が、株価を上げたいためだけに「自社株買い」を
行うのは、「成長」という視点から見ると間違えています。
「グロース」銘柄として上場してきた会社が、対して「グロース」していないうちに
「自社株買い」を行うのは、「何を考えてるんだか!」と「喝!」を送りたい
気持ちであります。